2009-02-01から1ヶ月間の記事一覧

* たくさんのなかのひとりじゃないちゅん

その檻の真ん中にはとがった草に囲まれたテーブルほどの岩があった。ちょうどくぼみのところにひよどりがぽつんとしゃがんでいる。灰色に曇ったとても寒い日で、ひなたぼっこをしている様子でもないしかといって震えている様子もない。ただ丸い真っ黒な目を…

* 朝の足音、ぼんやりと愕然

バイト先の事務所が移転したので朝歩く距離が少しだけのびた。同じように通勤するひとがだんだん減ってゆきいつのまにか足音がひとつになる。子供たちが門の警備員さんに元気な挨拶。雨の名残が肺を満たす。ヒヨドリがきかんぼうらしい声をあげながら横切る…

* 鮮やかな、もうひとつの宇宙のわたし。

金曜日に図書館で借りたのは『密やかな結晶』と大江健三郎の暴力に関する対談集(ソンタグとのものがあったので)、オンダーチェとカーシュとウィンターソンと岡崎京子。ばらばらな選択だし、岡崎京子とオンダーチェ以外は初めて読むひとばかり。たくさんの…

* ひそやかなけっしょうのこと

今読んでいる本がとても『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』を思い起こさせる。失われてゆくものの、失われえないおはなし。やわらかい視線で丁寧に選ばれたことばはひっかかることなくするする入り込み、ほどけてとけている。綺麗すぎるけれ…

* 移動のなりたち

からだは進むのに、足はまだ床と接している。いちばん動いている気がする足はじつは一番長いこと止まっている。

どこかの太陽を想う

風にぶれる手元をかためながら。寒くても、昼間の太陽が懐かしくても、夜が好きだ。南の島よりも、いつも太陽を待ち望んでいるような北国がすきだ。目を瞑ると地面の裏のどこかを照らしている日差しと、ちくちくした影を伸ばす芝生が見える。ヘリコプターの…

鏡の国のアリス、銀塩

今日からコントラステのリハーサルが始まった。鏡の国のアリス、らしい。小さいときに読んだな。でも、チェスの話だったということとか、全部反対…といううすぼんやりとした印象しかない。難しかった気がする。きっと今読み返したら違う感想をもてるんだろう…

* 夢/弦楽器を弾く

パブロ・カザルスのバッハを聴きながら寝た。Mちゃんがバイオリンを貸してくれてそれを一生懸命弾こうとする。間違って持ち手側をあごに挟んで弾いてみたりしちゃう。弦が、ナイロンの引越し紐みたいなものでできていて、Mちゃんのバイオリンはとても使い込…

* 夜と骨

誰もいない港。オレンジのひかりが全部を静かに止めて、かすかに揺れる足下と舟がこすれてきいきい鳴く。しおのかおりと溜まったいろんなものの匂い。 機械の入り組んだ仕組みを眺めるのが好き。その働きを知りたいとは思わない。ただ、その複雑さや細かさを…

エドワード・ゴーリーに捧ぐ

“磨耗は厳密な法則にしたがって生じる。自分自身が寂寥のただ中にあって注視した者でなければ、落莫たる寂寥の再現はできない。遺棄されたものは身の毛がよだつほど美しい。”~『白と黒-エドワード・ゴーリーに捧ぐ』 トーベ・ヤンソン

* 六本木家族ツアー2

こんな小さな池にビルが入っちゃう。 ちっともきれいじゃない。よどんでる。けれど惹かれる、水の底って。 すごく鮮やかに咲いていたのに写真にしたら青みがかっちゃった。一度冷凍して解凍したみたい。写真を撮るってそういうところがある。 六本木在住。

* 六本木家族ツアー1

なかなかお出かけに連れて行ってくれないと嘆く母を連れ出そうとしたらやっぱり父だけを家に置いてゆくのもこころにひっかかるみたいだった。面倒くさそうにされちゃうかなあと思いながら誘うと、そうくると思ったよ、とすんなり受け入れてくれた。両親とお…

* memo/ようこそ先輩に森山開次さん

●NHK 課外授業・ようこそ先輩2月22日(日)13:05~13:34 NHK総合「感じるままに、君だけのダンス!(仮)」森山開次(ダンサー)---------------------------------------------------------------------------骨のかたちと位置が綺麗で…

* 氷の雲

春の陽気が夢のように醒めた日、分厚い雲を辿って西の空を見ると太陽がまだ見上げる角度にあった。雪を降らせる雲みたいに分厚い雲に隠れているのに太陽は雲を透かしてまぶしく輝いていた。きっと水分が多いか、氷の粒が大きいからこんなに透けてみえるんだ…

* にぎやかな眠り

子供の頃にも家族の中に鳥がいて、その子は飛べないインコだった。明るい黄色にちょっとメロンのシロップをかけたふわふわのかき氷みたいな色。コーヒーカップを入れる棚を空けて、ぴいちゃんの居場所にしていた。どうやらうちの家族はちゃんとカゴを買って…

* 妄想の感傷

友達と話していて急にそれが自分の経験と重なり、話しているときにはそんなに深く思い出さなかったのだけれど帰ってからひとりシャワーを浴びながら急にまざまざと思い出し、どんなにか私がひどい仕打ちをしたかということに涙が出た。もうずっと昔、何年も…

* カンパネルラによせるメモ

今日見てきたNさんの舞台の感想。感想というより、自分なりの、舞台に関するメモかもしれない。「銀河鉄道の夜」というお話の持つ純粋さのようなものをぎりぎりのところで保っていた(このぎりぎりさ加減はおそらく意図したものだと思うのだけれど)のは、創…

* 『隠された記憶』 ミヒャエル・ハネケ

※私なりのネタばらし(正解かは分からない勝手な解釈)をしているので注意。※ なんでもない街の一角の風景で始まる。 殆ど変化もないし、長すぎない?と思った頃に映像が乱れる。 おーいTSUTAYA。と思った次の瞬間、それがビデオに映された景色だということ…

* 春が顔を見せた日

ライブに招待をいただいたとき、ふとそのひとを誘ってみようと思って、あまり今まで話したことのなかった、けれど話してみたい気がしていた会社の女の子を誘ってみた。彼女は歌をうたうひとで、多分通じ合う部分があるのではないかと感じながらも、会社では…

* 『オウエンのために祈りを』 ジョン・アーヴィング

アーヴィングの描くものがたりにはいつも、その人生まるごとの重みがセットになってついてくる。ひとつひとつが生きて、積み重なっていって、圧倒する。こころをふるわせる話はいくつもあるけれど、アーヴィングを読んだときに感じるどうしようもないこの、…

* 『Le Sous Sol / 土の下』 ピーピング・トム

(注!! 内容が分かっちゃうからリトルミイさんはまだ読まないで☆)会場に入ったとたん舞台美術にわくわくした。地面が画面の真ん中にあって、上にはまっすぐな樹と静かに座る人物、地面のしたにその樹の根が伸び、そこに広い居間。居間の床は一面土に覆われ…

* おりて、ほって、たしかめる。

舞台を見終わったあと、友人が勤めるお店でご飯。おどる私よりも踊りに詳しいKくんと話すことはいつもとても刺激的。自分が何をどう感じて行き着くかもしれない先はどこかということを、増幅したり練り直してクリアにしたりできる。話題はピーピング・トムか…

カザルスのことば

芸術家は同胞の闘いと苦しみから離れ、象牙の塔に立てこもるべきだと信じている人がいることを私は知っている。私はこの考えに不賛成である。人類の尊厳に対する侮辱は、私への侮辱である。人間の権利は、他の人たちより芸術家にとって重要ではないのか。芸…

index

今年は土壌だ、ということを決意してからなるべく空いた時間を読書や映画に費やそうとしているのだけれど、ひとつ見たり読んだりするとやはりそれを消化したりそれについてアウトプットしたりする必要があるようで、だんだんからだがそわそわしてくる。きっ…

* クワンとジュリアナ

4月にアラン・プラテルの作品が来る。2年ぶりにクワンとジュリアナが来る。ピーピング・トムの公演に入ってたチラシには、出演者にジュリアナの名前もあった。彼女がどんな風に踊るのか、すごく楽しみ。前回うちにステイしてくれたとき、私も英語を話せない…

* 『オルフェウス&エウリディケ』 カンパニーマリーシュイナール

冥界から妻エウリディケを連れ戻そうとしたオルフェウスは数々の試練に打ち勝つが、最後のさいごで振り返ってしまい永遠に妻を失う。もっとも悲しく、もっとも美しい別れのシーンのひとつ。神話はどこから、どんなふうに生まれてきたんだろう。どうして世界…

きんかんの甘露煮

おばあちゃんが宮崎のきんかんをお友達にいただいたらしい。そのままでも食べられる、完熟の甘いきんかん。1kgちかくいただいたらしく、おばあちゃんひとりだと食べきれないから、とレシピを調べてあげた。砂糖の量はきんかんの3分の1から半分くらい。ひ…

補完

映像やにおいや温度でしかものを覚えられない私は、記憶することに対する自信がまるでなかった。あの時こんなことあったよね、って言われても、その時の感情は思い出せるのに細かい出来事をすぐに取り出せない。その時どんな場所にいて何を見ていたか、景色…

* 透けて見えること

こころまちにしていた本が届いた。クウネルで知った森麗子さんの画集。 (Click!) 職場の近くに図書館をみつけたので本はなるべく借りることにしましょうと思っているのだけれど(返すまでに読まなきゃ、と思うとだらだらせずに済むし)、めずらしくすぐに購…

まよこの関係、アネモネ、ワダエミさん

朝、顔を洗うときに湯たんぽをベッドから引っぱり出し、ぬるくなったお湯を洗面器にとぽとぽ注いだ。ちゅんがばさばさとやってきて肩にすとんととまる。お風呂に入りたいの?ときいたけどただ見学しにきただけみたい。顔を斜めにしてぬるま湯を見た。ちゅん…