* 春が顔を見せた日



ライブに招待をいただいたとき、ふとそのひとを誘ってみようと思って、あまり今まで話したことのなかった、けれど話してみたい気がしていた会社の女の子を誘ってみた。
彼女は歌をうたうひとで、多分通じ合う部分があるのではないかと感じながらも、会社では半分でしか生きていない自分なのでなかなかきちんと向かい合うことができなかった。
もう一緒に働くようになって3年くらい経っているのにもかかわらず。
帰りに渋谷のざりがにカフェで随分しっかりと、いろんなことを話した。
ずいぶんと熱くなって話をしたと思う。
話しながら、ずいぶんとかたちにできるようになってきたと思う反面、かたちにしたことばや決意をただのカタチとしてつかまえているだけではいけなくて、さらに次に進まなきゃいけない、ということを考えた。
ひとと話しながら私は何を考えているんだ。

迷わずに済むところは迷わなくていい。
疑い出すときりがないのに自分の足下を疑ってみようとするから、スタート地点を揺るがすところからはじめるから、混乱する。
一度信じてみればいい。
すっとシンプルに切って、任せてみればいい。
浮かびたいことばはおのずと姿を見せてくれるし、その過程で時間がかかるからって乱暴にもぎ取ることの方がよほど失敗が多いのだから。

自分がどんな人間なのかわからないのは多かれ少なかれみんな一緒だし、わからないって言いながら一生甘えたままでいたくない。
ちゃんと寄りかかったり、素直に怒ったり、すっと一線を引いてそのままにしたり、穏やかに過ごすことばかりに気を回したりせずに、敏感に眺めてもいいんじゃないか。

ときどき自分が融通のきかない侍みたいな性格だなあと思うことがある。
自分がちゃんと責任をもてないものには甘えられないし、全部を注いでいるという自負がないと喧嘩をすることもできない。
なんでこう、単純に右と左に振り分けようとしちゃんだろうな。
灰色が好きとか大事とかいいながらすぐ白黒つけようとする子供みたいなところがあるし、もうっ。
日記も、カタイし。

話せてよかった。
ムーミン好きだってことも分かったし。
今度本を貸してあげる約束をした。
会社にほっとできる存在ができたこと、なんだか嬉しい。