* 『Le Sous Sol / 土の下』 ピーピング・トム



(注!! 内容が分かっちゃうからリトルミイさんはまだ読まないで☆)

会場に入ったとたん舞台美術にわくわくした。
地面が画面の真ん中にあって、上にはまっすぐな樹と静かに座る人物、地面のしたにその樹の根が伸び、そこに広い居間。
居間の床は一面土に覆われており、窓からは大量の土が流れ込み山を作っている。

地面の下のことを時々思う。
小さな林に出会うとその地面の下の根っこのことを考える。
土や石をたくさんかかえていて、見えない水が滴っている、むせるようなかおりのこと。
樹だけじゃない。色んな種類の下草の根がやっぱり濡れている。
地面を境にして空にも、土のしたにもいっぱいに伸びてゆく樹のこと。

かすかな鼻歌とともに白髪の女性が小さなおうちとともに照らされる。
女性はろうそくでその家を中から照らし…と思う間に火が包む。
サクリファイスみたいだったのはその鼻歌がなんだか東欧とかロシアのメロディーに似ていたから。そして土の上を滑ってきた霧のせい。
土を嫌う劇場で、火まで!と驚いたけれど、こんなに美しい一瞬のためならそれを通した甲斐もあったろう。

そしてすぐあらわれたダンサーの、土が敷き詰められているからこそできる動き。
…といってもすごく身体能力の高いダンサーだから、ということもあるんだけど。

ピーピング・トムはベルギーのアランプラテルのバレエ団とも一緒に仕事をしているひとたち。
クワンやジュリアナもそうなんだけど、アランプラテルはダンサーをそのなかに囲わず、こうして自分たちで自由に活動ができるらしい。
素敵。
アランプラテルの舞台装置も大掛かりだったし、これをどうやって稽古したんだろう?と考え込んじゃったけれど、今回のこの動きも、土あらばこその動きばかりだったから、どうやってこの動きを生み出し、稽古してきたんだろう?と不思議だった。
それからあれだけ土を巻き上げ、まみれながら踊るのに肺は大丈夫なのか?と心配。
歌手の方なんてやはり喉には気をつかうだろうに…とか。
けれど終わってみて舞台上の土を触らせてもらってわかったんだけれど、土はかなり水分を含んだもので(多分普通の土じゃないのかも。花壇とかに使う、ちょっとふわふわしたスフレっぽい土に近かった)土埃が立つようなタイプではなかった。
でもこんなクッションのある土の上で跳ねたり、蹴り上げたりするのはすごい筋力を使うだろうなあ…と。
とにかくアランプラテルのひとは体が強い。

前日に見たマリー・シュイナールと似たような根幹を持ちながら、表現方法は間逆で、とてもずっしりと重たいパンチの効いた舞台だった。
にやり、と笑っちゃうところもあるんだけど。

こういう演劇的なダンスの舞台が日本にたくさん入ってくるようになったなあ、と思う。
でもやっぱり見に来ているお客さんの層は決まっている。
なんだかもったいないなー。
踊りって分かりづらいかもしれないけど、結構おもしろいのに。
映画みたいに気軽に見に来てもらえる値段でできたらいいのになあと思う。


同じ時代に生きているのにこうして私がやっと得たかもしれない感覚をとっくに作品として落とし込んでいるひとたちがいることにおしりをたたかれたり、
違う場所に住んでいても年代が違ってもこの世界の流れから同じことを感じたりしているのかなあと嬉しくおもったり、
色んな思いがあった。

マリー・シュイナールもピーピング・トムもすごく面白かったけれど感想が思うように書けない。