カザルスのことば



芸術家は同胞の闘いと苦しみから離れ、象牙の塔に立てこもるべきだと信じている人がいることを私は知っている。私はこの考えに不賛成である。
人類の尊厳に対する侮辱は、私への侮辱である。
人間の権利は、他の人たちより芸術家にとって重要ではないのか。
芸術家であることによって人間としての義務を免除されるだろうか。
芸術家こそ、どちらかといば特別な責任を負っているのだ。なぜなら、芸術家は特別鋭敏な感覚と知覚力を与えられており、ほかの人の声はきかれないときも、芸術家の声は聞かれることがあり得るからだ。
芸術家ほど自由の擁護と自由な探求に関心を多く持たねばならぬ者が他にあろうか。この二つは芸術家の創造活動そのものに欠くべからざるものであるから。

~『パブロ・カザルス 喜びと悲しみ』