* 氷の雲



春の陽気が夢のように醒めた日、分厚い雲を辿って西の空を見ると太陽がまだ見上げる角度にあった。
雪を降らせる雲みたいに分厚い雲に隠れているのに太陽は雲を透かしてまぶしく輝いていた。
きっと水分が多いか、氷の粒が大きいからこんなに透けてみえるんだ、と考えながらカメラを取りに走った。
友達から砂袋を撮影するときに「間に合わない、間に合わない」と言いながら撮っていた友人の話を聞いて、動かない砂袋を撮るのにね、と笑ったことを思い出した。
そうだ。間に合わない。
雲は動くからというのももちろんあるけど、この出会いが鮮やかなうちに早くはやく。

空を見上げてくんくんにおいをかぎながら、温度と色を胃の方までおとしこむ。
空が好きだから空のことを少し知っている気がする。