泥のからだ、あしのうら

夢。
部屋のかたちは新宿のおうちに近い。
南から北へからだは進むけれど、部屋を移動しても四肢のどこかはずっと前の部屋に残っている。
先端が重たい泥のように置き去りにされながら、根元は引き伸ばされ足されて描かれるように伸びてゆく。
千切れそうな危うさはない。だた、影の角度が変わるように、置いてくるように。
手足はそれぞれの部屋の感覚をみている。
南の部屋と西の部屋とでは温度がちがう。
太陽があたっているか影になっているか。床の感触。家具に触れる。風の方向。
部屋それぞれのにおいや風景を、残った部分で細かに感じようとする。
胴体はそれを統合しながら移動する。
どこにでも存在することができる、と思う。
こうして残してゆけばどこにでも、何時にでも、いられると思う。

+

起きたら小鳥が部屋の前で待っていた。
おはよう、とくちばしを撫でて台所に向かうと肩に舞い降りた。
熱いあしのうら。
このあしでいろんなことを伝えてくる。
心配してそっと降りる足、自分がいるよと伝える足、食べたくて焦っている足、じっとくつろぎたい足。
いっしょにとうもろこしを食べてキャッチボールをして遊んだ。