『モモ』、『精霊たちの家』、血の叙事詩、alba

『モモ』を観た。
ちいさいころから何度読んだかわからない物語。
見ることをずっとためらっていたけれど、ミヒャエル・エンデ自身が制作に携わったということで励まされ(しかし原作者が映画制作に立ち会ったからといってその映画が必ずしもイメージを保ち、且ついいものになっているかというのは別の問題なのだけれど)、やっと見た。
モモを演じる女の子はとても可愛かった。
ちょっとときどき大人びすぎているような気もしたけれど。
けれど、コロッセウムの穴から出てきて町のひとびとのこころに溶け込む最初のシーンで満足してしまった。
一番好きな難破船ごっこも描かれていたし。
ジジもイメージどおりだし。
時間どろぼうの車はベンツで可笑しかったし。
時の花のシーンはわたしのなかにあまりに鮮やかなイメージがあって、それに満たされているので、あまり画面が気にならなかった(そのシーンはだめだったということではない)。
きっと『モモ』を読んだ人の数だけ共通しないイメージがあるんだろう。

モモ [DVD]

『精霊たちの家』を読んでいる。
ずいぶん昔に映画は見て(たしか、メリル・ストリープとかジェレミー・アイアンズとかウィノナ・ライダーが出ていた気がする。あとラテン系の俳優さん)それもとてもよかったんだけど、本はそれ以上に、とてもいい。
なんだか人生は織物のようだな、と思う。
ひとつの人生だけじゃなくて、血というものが。
自分から派生した小さなことがいつか、自分の血の末端に織り込まれ、それが主軸となってまた枝葉をひろげてゆく。
時代や血やその時のひととのかかわりや記憶や…
なんてたくさんのことに絡めとられてひとは生きているんだろう。
自分のことを考えるとそんなあみはなかなか見えないんだけど。
あみから漏れ出る光がやっぱりうつくしいなあと思うし、それが投げかける闇がつくる匂い立つような染みもにもこころをかきたてられる。

その本にアルバという少女が出てくる。
夜明けという意味のその名前がとても好きになった。
ふと、アルバトロスってどういう語源を持っているんだろうと考える。
つぶやいたらアラビア語のことやラテン語のこと、あほうどりのこと…いろいろ教えてもらった。

学名辞典を図書館でめくりにいこうと思う。
できれば雨の日がいいな。
セバスチャンみたいに屋根裏で毛布に包まって読みたいけど、ほんとうは。

精霊たちの家 (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 2-7)