『L'ÎLE D'OR』Théâtre du Soleil

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チケットを会場で受け渡され、役者さんが壁に貼り付けた座席表から席を選ばせてくれる。早速遊び心を感じて嬉しくなる。
食堂は演目に合わせて日本(アジア)の屋台風になっており、メニューも和食が多いようだった。出汁の匂い。
太陽劇団は日本にもファンが多い。今回の舞台照明も、日本でお世話になっている照明の方がプランに携わったようで、今回の演目に関わらず日本と縁があるのだという。
『L'ÎLE D'OR』は去年の日本初演が感染症の影響で叶わず今回のパリが初演。しかしさらに昨年は演者に陽性者が出て公演を中止にしたため、春まで演目が延期になった。私の場合はそのおかげで見に行くことができたのだけれど。

大きな提灯がぶら下がっていたり、壁には墨絵が描かれていたり、開演を待つベンチのそばには古い街灯を模した灯りがあったり、お客さんを楽しませる仕掛けがたくさん。客席の真下は楽屋になっているのだが閉じられておらず、メイクをしている役者さんが見える。しかしメイク台がずらりと遠くまで並んだ様子は圧巻だった。
舞台の上手側には色んな楽器が入った部屋があって、音楽や効果音を出している姿も薄く見ることができる。
随所に手作りのまるみというか温かみのようなものがあって、むかし自分がイメージしていたサーカスを思い出した。私もこんな風に日常じゃないところに生きて、ときどきお客さんをその世界にいざなうようなことをしたかったのだった。

役者さんはひとりを覗いてみな日本人ではないのだが、日本人を演じている。立ち居振る舞いの細かいニュアンスがよく研究されていて感心してしまった。ちょっと固まった猫背の感じ、歩く時の体重移動の仕方、会話の独特な間…。外から見たデフォルメされた日本人ではあったけれど、あんな風に体の雰囲気を変化させてその国のひとを表現できるのはすごいなと感心してしまった。(ついでに言えば、いかにもフランス人!という人の演技も。創作は観察眼だな…)


ただ、本当のことを言うとまったく内容が分からなかった。これは完全に私のフランス語力の欠如のせいなのだけれど、見事に全然分からなかった。やっぱり演劇を見るのは映画を見るよりもうんと難しい。
考えてみたら日本語で演劇を見るのだって、内容を深く理解するのは難しいもの。

だから正直に言えば、どういう評価をしたら良いか全然わからない。
いかにも日本人という吊り目のマスクを被り、ちょっと日本舞踊のシーンが杜撰に見えたり、津波を思わせるようなシーンがいくつかあったこと、それが、どういう文脈、どういう丁寧さで扱われていたのかが測れない。
役者の演技や演出、これだけの舞台空間を作る劇団であればおそらくそれが粗雑に扱われていたわけはないとも思うのだが、優れた作家であっても、自分から遠い世界のことはステレオタイプで捉えてしまう可能性はある。テキストの内容がもう少しだけでもわかれば判断材料になったのになあ、…脚本を読んでみたい。
または、別の演目を見てみたら分かるかもしれないなあ(今度は内容を知っている古典などを下敷きにした作品で)とも考えている。

www.theatre-du-soleil.fr