* こうして過ごせる日はあとどのくらいあるんだろう?



ひとりで歩いているとだんだん思考が断片的になってくる。
目から飛び込んでくる情報がことばにすりかわるスピードははやい。
だから、ひとりできょろきょろしているとすべてものに小さな感想のようなものをつけることになる。
あの影はいつか見た壁のものに似ている。
やっぱりこういう反射が好きなんだな。
同じかっこうで川を覗いている。
見上げることは子供時代の仕草なんだ。

ときどき、どこでどう関連して生まれたのかわからない短い結論のようなものだけぽんと浮かび上がってくる。
かなり重要なことだったりするのになにげなく浮かび、あっさりと消え去ろうとする。
待てまて、とつかまえてなぞり、すじみちはあとから考えることになる。


ようやく自分の求めていることが把握できるようになってきた気がする。
欲しくても結局は手にしないであろうこと、このままじゃ手にしないまま終わってしまってそれだけは駄目なこと、目を向けたくないくせにどうしても手に取ってしまうこと、だらしなく未練がましく手を離せないこと。
そういうことはうらはらに起こるものだけれどただ混雑の中、すべてをひっかけて泳いでいたからなんだか大変だった。
大変だったし、でもなにを大変がっていいのかわからなかった。
今は少し感覚できるようになったかもしれない。
それはたぶん、自分の中心へおろした糸がようやっと何かに触れようとしているからなんじゃないか。
そんな気がする。