右手に川がある
空には鳥がいない
その川のことをわたしは知っている
それはあの電線を赤い空の中に見たからだ
森に沈んでいる川は地下に吸い込まれる川とどういう違いがあるんだろう?
いつか木だったことがあるに違いない、だってそこにあればわかるのだから

地上にはたくさんの輪郭があってそれに対して空はひとつだ
でもどんなものもかならず毎日空に飲み込まれてしまう
わたしもそう

まだ少しだけ影がそれとわかる
鉄塔と雲がつながって煙突になる
煙の中には色とりどりの電飾がついて雲がどこにも行かないように留めている
そのいたずらを眺めるのがわたしだけなんて惜しいと思う

誰もまわりにはいなかった