『手紙』 小西 真奈美

友達に借りた本のことばたちがやさしくて、あまりにもすっと透明で、こころはぐんぐんそれを吸い取りたいようだった。
けれどもうこれ以上電車のなかでは読めない、あふれちゃうから。
と、たった今本をぱたんと閉じた。

余韻が潤うみたいに鼻から胸につたっていって、背中に注ぐ朝の太陽と一緒にわたしをあたためてくれる。
じんわり、目を閉じる。

いちばんだいじなことがなにか、
うん、よし。
ってととのえなおせた気がする。

空をみる。
深呼吸。


手紙