インクとフィルムと瞳と皮膚のこと

稽古が早く終わったからルーニィに行ってジュンさんの写真をみたあと、篠原さんの「写真展を開く!」を読んでいろんなことを考えた。
目の前には道路があって横断歩道があって信号で切り替わって人と車が交差してゆく。
通れば一瞬だけどこうして立ち止まっているわたしにとっては膨大な量が重なっていって、もちろんこれはわたしがいなくなっても続くしこれまでも続いてきたこと。
そんないち部分を見つめながらただただ、あらゆることが頭に浮かんでは、また別のイメージに押し流されていく。

思いついたことを必死にノートに書いていたらインクがなくなって、もうそれ以上記しておけなくなった。
ぷつんと切られた文字の先はもうただ流れて、大半はきえてゆくだけだ。

今日はカメラを持たずにいる。
撮る時間がないと思ったから。
でも太陽を背にした給水棟とか、滑るように壁に投げ付けられた薄いひかりの反射とか、撮りたかったなというものはやっぱりあって、何度も振り返りながらやり過ごす。

見るということと、踊るということがつないでいるそのちいさい手のことを思う。


書くべきペンがなくなった今とカメラを持たない一日は、似ている。