三歳児

元旦はおばあちゃんちに親戚が集まる。

こないだまで赤ちゃんだったKはもうすぐ3歳になる。
電車が大好きで音がすると見せて欲しいとせがむ(窓が高くて自分では見えないから)。
私の膝に座って無心にというかたべもののことでこころをいっぱいにして動物みたいに食べていた。息も荒くなっていてもうたべもののこと以外は頭にない。
大人になるとなかなかそうはなれないから感心してしまう。

私のカメラに興味を持ってひたすらシャッターを押していた。
電話でもエレベータでもボタンというボタンは何でも押して回るのでときどき大変なことになる。
ラジオが鳴りっぱなしになるとかテレビが急に消えるくらいはどうでもいいけれど半年前はおばあちゃんの緊急呼び出しボタンを押して救急車が出動してしまった。

こうやって片目でここを覗いてここ押したら撮れるよ、と教えたら片目つむるのができなくて両目をぎゅっと閉じたまままぶたをカメラに強く押しつけてシャッターをきっていた。
撮るものにすごく接近するし両目を全力でつむっているしカメラが重いからボタンを押す時にお辞儀しちゃうしいったい何が撮れているやら。
でもシャッターをきったあと何だか手応えを感じたのか満足気だった。
別のコンパクトカメラを渡してもやっぱりメカっぽい私のカメラが気にいったみたいで、飛び出てるところを全部押したりひいたり回したりしていた。

わたしの一番最初の記憶は1歳半のときのもので、橙色という日本語を覚えた瞬間のものだ。
うさぎ小屋でにんじんを見ながら傍にいたお兄ちゃんに教えてもらった。
「あれは橙色っていうんだ」と日本語ではっきり考えた。
それまでその色をなんと読んでいたか、もう今では思い出せないけど。

三歳児はもうだいぶいろんなことを考えているんだろうな。
聞いていないようで聞いているし大人がわからないと思っていることの大半はわかっている。(すごく間違って理解していることも多いけど)

お母さんのおなかのなかはどうだった?って聞けばよかった。
ときどき答えてくれる子もいる。
1歳とか2歳だと質問の意味がうまく通じないし4歳とか5歳になると忘れてしまう。


子供に触れていると内部でいろんなもじゃもじゃが動いているみたいに感じる。
底無しで、その底無しがどこにも定められないで駆け回っている。