夢/黒い燐粉、重機



外を見ると空が黒い蝶でいっぱいだった。
燐粉を水にまいてそれを水面下から見上げているように、黒々としたうずが街の明るさに照らされて時々鈍く銀色に光っていた。
はるか遠くまで蝶が埋めていて、青空は時々しか見えない。

蝶が入ってこないように薄く窓を開けると低く静かなうなりが聞こえた。
風をかき混ぜる地響きみたいな深い音は空を占領していたけれど、目に見える蝶の数とその音の量は不釣合いだった。
蝶は音をたてて飛ばないものな、と思う。
たくさんのすずめが恐れてベランダに避難してきていた。

よく見ているうちに蝶たちは黒い小さな鳥なのだということが分かった。
なにがあってこんな大群が押し寄せてきたんだろう。
排水溝に吸い込まれる水みたいに、ときおりまとまって螺旋を描きながら急降下する。

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ベランダにいたらものすごい大きなクレーン車が目の前を通っていった。
うちは11階なのに、そこまで運転席が届くほどのクレーン。
こんな大きな重機で公道を走っていいのかな、しかもブームをたたんでもいないし!
と思ったとたんベランダの角に車が擦っていった。

レゴブロックの青みたいに鮮やかな色の車だった。