帰国

フランスから戻ってきました。 去年の冬は白馬にいたこともあって、そのあとカナダにいってパリに移動して、なんだかずっと遠いところを転々としていたような気がする。 あちこちを歩きながら、どこにどういう風にいたらいいんだろうなあ、ということをずっとからだのどこかで掴みかねて、それでも毎日新しいことを目に飛び込ませようとしていた。 ときどき遠くが見えなくて、呼吸が浅くなった。

覚えている景色がたくさんある。 もう思い出したくない気持ちもある。 わたしを生まれ変わらせてくれた言葉も。 たくさんの友達ができた。

なにかが粉々になったままだった。 でもそれをなんとかして包んでしまえることも知っていた。 どれだけ醜さを知ればいいんだろう? なぜいつまでも私の一部は変わらないんだろう? わたしが何を思い、どうなっても、誰にも関わりがない。 どこからも、遠すぎる。 断絶にはひょいと足を踏み入れることができるのだと知った。 簡単に、 それでね、と、毎日の続きのように。

吹きちぎられそうな風のなかで、 ちりばめられた宇宙をとびながら、 わたしは連れ戻された。

思い出した景色があって、その時わたしは、生まれては消滅しまた生まれてくるその永遠のほとばしりを静かに見ていたのだった。 繰り返されるそれには意味がなかった。 生にも死にも、ただそこには光と躍動と変化があるだけだった。

そっか、と深く息をつく。 どこにも去ってない。 守ってきたものは、ちゃんと守られてくれてた。

だからこそいま、自分を叱らずにおれない、 のだけれど。

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カナダでもフランスでもお財布を1度ずつ盗られました。 みなさんは十分注意してください。 お財布は絶対に内ポケット、からだの前の方へ。 でも、どんなに困っても、助けてくれるひとがいるっていうことを、今回の旅でも確認したのです。