ささやかなお花見



3月いっぱいで終わるはずだった仕事が1ヵ月延びた。
ずっとお世話になっている上のひとがお昼に誘ってくれて実は少しだけ雑務が出そうなんだけど残って仕事できるかな?と言ってくれたから。
色んなことがあってもこの仕事を続けられたのはお世話になっていることに報いたいと思ったからで、求められるならもう少しここにいようと決めた。

今日はもう殆ど仕事がなくて、いい天気に誘われて一緒に働いている女の子と完成した建物の周りを歩いた。
色んな種類の植物が植えられていて、もう根付いて元気に花を咲かせているものもあれば土の感じが新しくてまだそこに慣れていない草もあった。
竣工する前から図面に計画的に植えられる樹が楽しみで、それを今見ているんだなぁとしあわせな気持ちになった。

小さく丘になっている公園には紅色の枝下桜と妖精のスカートみたいな薄い色のさくらがひっそり咲いている。
鳥はもうずっと前から公園を見つけていて花の蜜を吸ったり枝の間をくるくる飛び回っていた。
まるいベンチに座ってしずかに話した。
鳥が動くと、風が吹くとさくらがわかれて落ちてくる。
さくらはそこにあるだけで何かをかたちづくる。

設計図でしか見たことがなかった建物の裏側を見られた。
欲を言えば、すみずみまで歩いて屋上にも行ってみたかったな。

暖かくて不思議に話も尽きなくていつまでも続く時間みたいだった。