岩手/畑でちいさく迷子





ときどき鳥よけの鉄砲の音がしていた。
だれもいなくて、日差しが強かった。
浴びきれないくらいみどりがあふれていた。
でも強くなくて、気構える必要もなかった。


たったひとりで歩くと色んなことを考える。
こころの中でひとりごとをずっと話している。




左手には北上川がジャブジャブ流れていて、私は深い草を分けて歩いている。
濁った色になった大きな川と草原なんてトム・ソーヤみたいだなあと考えながら歩いていたら、迷子になった。

畑でどうやって迷子になるの?
とびっくりするだろうけれど、畑は周りの畦しか当然歩けなくて、その畦はどこも似ている。
私が通ってきていない畦でときどきものすごい大きな蜘蛛の巣のトラップがあったり、草が深すぎて足を入れる勇気がなかったり、土手までは溝が大きくて渡れなかったり…
見晴らしがよくても迷子になるんです。


畑へ