なにがなんでも重なってゆく



今年は目黒川に散ったさくらが帯になって流れているようすを見ることができなかった。
ちょうどその頃ぽっかりと、わたしはなにをしていたんだろう。

いろんな方法ですこしでもひとり息がつける時間をみつける。
けれど理由もなく気が急いていて、いつのまにか終えた煙草をくしゃくしゃと押しつぶす。

さくらは終わってしまった。
そしてハナミズキが満開。
春は一年でいちばんさみしさに連れてゆかれやすい時期なのかもしれない。
だから次々に咲いて、次へ運んでくれる。


仕事の合間によく見上げる木がある。
たてものの隙間からほんのはしっこが見えるだけなのだけれど、風にざわざわ揺れたりときどき鳥が枝を渡り歩いたりしている。
木も、私を時々見下ろしてくれたりするのかな。
それとも空に伸びることにすべてついやしてるのかな。