岩手/猊鼻渓



疲れていたみたいでほんとうにベッドにずぶずぶ沈むみたいに眠って、次の朝はしっかりと寝坊した。
朝ごはんをゆっくり食べて荷物をまとめて、猊鼻渓に。
電車を調べたら1時間も先でびっくりする。

雨が弱く降っていて、屋根をかけての川くだりだった。
たちこめる…というほどではないけれどうっすらと靄がかっていて、吸い込む空気も気持ちよかった。
船頭さんはこんな雨の日にきたらつまんないだけだよ、とお客さんを笑わせていたけれど。

船頭さんの話しぶりがほんとうにすばらしかった。
ゆっくりやわらかい口調で、すらすらセリフを言う。
はしばしに冗談をはさんで飽きさせない。
台本があるのかな、と思うくらい(あとで聞いたらそれぞれの船頭さんが自分のオリジナルを考えているらしい)。
ちょっとしたお芝居よりずっと洗練されていて、あたたかく馴染む時間だった。




そのことばをひとつひとつ聞きながら、水を指で触ったり、霞む水面に伸びる枝をながめたり、並走する鯉にぶつかる水のことを考えたりした。
いちばんちょうどいい速度で進んでゆく。
水は重くて、なんて力が強いんだろうと思う。






折り返す前に休憩があって、自由に歩くことができる。
ほんの20分くらいの休憩だけれど、もしもっとゆっくりしたかったら次の便で帰ってくればいい。






地元のかたと話す