* ひとみでシャッターがきれたらいいのに



ひとを撮りたいな、という思いが募っている。
鷲尾さんの「極東ホテル」を見にいってからさらにその思いは増した。
たぶん、これはお借りしているカメラのおかげでもある。いままでのコンパクトカメラよりもファインダーを覗くと随分と身近なのだ。
そのひとが何かに心を奪われているところを撮りたい。
一生懸命話しているところとか、作業に熱中しているところとか、何かを見ているところ。
ものすごい集中というよりはもっと、日常のなかでそのひとがすんなりと何気なくたましいを入れているような部分。
けれどそんな場面を撮る機会はなかなかなくて、そしてもしそんな機会が訪れても今の私の技術のままではものにならないだろう。
手ぶれちゃうし、ピンボケちゃうし、逃がしちゃう。

写真を撮るとそのひとに特別な思い入れがわくよ、と聞いていたけれどほんとうだった。
多分、現像なんかしたらもっとなんだろう。

でもふと、私はちゃんと生身の人間をそんなふうに包んでいるかな、ということを思う。
だって、だいたいがひとと上手にコミュニケーションできないと常々悩んでいるのだ。
その思いとのギャップを、カメラだけが埋めてくれるとはとうてい思えない。
もしかして私が写真を好きなのは自分自身が切り込んでゆかなくてもいいと勘違いしているからなんじゃないかな、ということを思い、ひやりとする。
一歩引いてそのひと、その景色を見て、自分をそのなかに分けるように置いてゆく。
そういう作業を私はとても簡単に考えていないかな。
私の写真に足りないものはそういう部分なのではないかな。
と、なんとなく。