* 澄む



しばらくみないうちに澄んだひと。
「澄み切った」というかんじじゃない。
いくぶんやわらかで、まだのびしろのある「澄む」。
おいしい水でできているみたい、とひとめ見て思った。

ただ髪を切ったからだけではなくてすっかり絡まりを脱いでしまった。
毎日少しずつ抜け落ちて身の回りにはちいさな痕跡しか残さないから、自分の姿がこんなにも変わったことをきっと知らないのだろう。
ほっぺを赤くしてぽやぽやして、なんだか飛び立つ気まんまんの雛のようだった。
近くの、こぼれだす輝きに誘い出されたまじりけのない火も。

毎日を悩んだり思いつめたりするそのやりかたがきちんとからだやこころの丈に合っているんだろうな。
握りすぎたり取りこぼしすぎたりするとどうしてもどこか空洞だったりがさがさとひしめいたりする。


わたしはどうだろう、と振りかえる。
全部の道を通らずに見渡しただけで分かった気になったり、見つけた蟻の穴をほじってみたりするだけでタイムアウトになったり。
ほころびだらけの取り組みをしているような気持ちになる。
こうして日記を書いて確かめる時の慎重さをかなぐり捨てずに過ごせたらいいのに。