* 高尾山、バレエ発表会、自家中毒

“そこに山があるから登るのだ”という感じで、ふと近くにあったから、普段着のまま高尾山に登った。
薄いセーターとフエルトみたいなジャケット、マフラー、かかとの高いブーツ。
おばかさんだと我ながら思う。
今年最大の寒気がまきおこす風が杉の樹に積もる雪をこなごなに吹き散らし、容赦なくぶつけてくる。
進むにつれて地面が凍りついて滑るので、頂上は諦めた。
帰りはもうケーブルカーがなくて、ドリフの坂道みたいな下りを延々と。
ちょっと、膝の軟骨が縮んだと思う。

帰りには氷のようにからだが冷えて、何をしても芯があたたまらなかった。
今もまだ、骨のまんなかは隙あらばすぐに冷たくなろうとしている。

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コントラステのバレエ発表会のお手伝い。
いまや笑い話でしかないけれど、わたしもかつてポアントを履いてみんなと踊っていた。

あゆみちゃんの踊りはやっぱり気持ちがいい。
勘がいいのだな。
音の使い方の小気味よさは職人的。でもだからって情感に欠けるわけではなくて。
いいダンサー。

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外国にいきたいねー、と話す。
わたしはメラニーにも言われたようにいわゆるとても日本人らしいにほんじんなのかもしれなくて、生涯外国で暮らせる気は、今はしていない。
けれど、何年か、ちゃんと土地に馴染んでみたいな。
ただベルリンの生活が懐かしいだけかもしれないけれど。

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望まれるわたしであろうと、うそをつきすぎる。
からだのなかに溜まってどこにも抜けてゆかないうそ。
ゆくてを、どんどん阻むうそ。
空気を薄くうすくしてゆくうそ。
そのままのわたしなんてろくなものじゃあないけれど、息を止めてただ待つわたしは、もっとどうしようもなくひどい。