* 『天使』、『雲雀』 佐藤亜紀



中庭の木に小鳥が来ているのを見付けた。
小さな体の重みや羽毛のふくらみ、陽の光に溶けて滴る枝先の水滴まで感じ取れた。
彼はその暖かい塊を手の中に包み込むように感覚で包んだ。
それから、軽くつついた。小鳥は驚いて飛び去った。
更に体の力を抜いた。捉えられる全てのものが眩いくらいに鮮明になり、影は濃さを増した。
~『天使』 佐藤 亜紀


ここにある見えるものにもみえないものにも、手の届くものにもそうでないものにも意識を広げる方法はも知っている。
違いはそれがほんとうに起こっていることなのかを確信できていないということ。
もちろんそれが一番の相違であることは知っている。知っているけれど、読んでいてとても心地よかった。
風と水の中間のものがからだに浸透してくるよう。
膜に閉ざされていない個体や時間の感覚。
時間に隔てられない距離の感覚。

ぎりぎりまで切り詰められたことばが小気味いい。
描かれている感情や人間関係は豊かで、表面から感じる体温以上の熱を帯びている。
『天使』を読んでから『雲雀』を読むまでに時間を置いてしまったし人物を混乱させながら読んだから、もう一度2冊並べて読みたい。

佐藤亜紀さん、とても気になる作家さんになった。
ブログも見つけて読んでみたけれど冷や汗が出るくらいにきりりとしている。
■日記