本番初日終了、夜明け前



どうしても流れ星が見たいからベランダにちいさなコンピュータを持ち出した。
目の端に一度だけ光る線を見たような気がするけれど錯覚かもしれない。
いっぱい流れてきたらお母さんを起こそうと思うのだけれど、黄砂の影響か、あまり見えない。オリオン座ばかりを見つめる。

本番一日目が終わった。
無事に…とは言い難い。
リハーサルが押しすぎて、休む間もなく本番だったからみんなそれぞれにばててしまった。
私も脱水状態で両足が半ばつった状態で踊った。

ほんとうは、この大事な仲間たちともうまくコミュニケーションがとれないことを気に病んでいた。問題は私のなかにあって(どんなときもたいていそうなんだけど)だからこそ克服することが難しかった。
こうして一緒に踊るなかでじわじわと愛情のようなものが浸透してゆくのに、それをどうしたらいいか分からなかった。
このリハーサルが始まった頃にまみことちゅんとてるさんと飲みに行って、もっとひとを見ようと思った。
それで少し変わった気がする。
私と舞台との関係だけじゃない、一緒に踊ることに対する想い。
みんな、今日はばてずに踊ろうね。

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5時前にふと目が覚めた。
部屋のドアをこするような音がした。
何だろうと考えているうちに今度は羽音とドアにぶつかる音。
ちゅんだ、と飛び起きる。
居間に行くとまだ真っ暗なのにちゅんがめちゃくちゃに飛び回っている。ぶつかっている音も聞こえる。
慌てて電気をつけると体勢を立て直したちゅんは私の差し出した手に乗らず、目を見開いている。
落ち着くまで待とうとベランダに出て少し流れ星を探した。空気はいくぶん澄んでいたけれどやっぱりひとつも見えなかった。その代わり東の空に土星が昇っているのが見えた。
部屋に連れて帰って手に乗せ、眠るフリをしたらちゅんも目を閉じて眠り始めた。やっぱりまだ起きる時間じゃなかったみたい。怖い夢でもみたのかな…。
赤ちゃんの時にはずっと手で包んで眠らせていた。30分ごとにご飯をほしがるし、ちゅんをつぶさないか心配で毎日ちっとも眠れなかった。
久しぶりにずっとちゅんの寝ている顔を見ていた。

なのにこうして文字を打つ私の手を、ちゅんは「遊べ」と穴があくくらい強くつつく。
ひどい仕打ちだ。
みみずばれだよ。えーん。