夕方の嵐のこと

つむじ風に吹かれて南東へ飛んだ鳥が、今度は雨を避けるのに西へ飛んでいく。
雨は屋根を割れんばかりに打って、どうどうと滑り落ちる。
さっきまであんなに熱くなっていた何もかもがあっという間に冷やされ、その飛沫が手や顔にふりかかる。
本を閉じて避難させる。
夢中で眺めていたら麦茶の鍋が沸き騒いでいるのに気づかなかった。

暑さがやわらぐかなと思って昼過ぎ、中庭にホースで水を撒いたのだけれど、そんなの全然意味がなかったね、と外を呆然と見ながら話す。
いや、もしかしたらそれが呼び水になったのかもしれないよ。庭から立ち昇った小さな蒸気がつむじ風を起こして、分厚い雨雲を引き寄せたのかも。

真上を旅客機が飛んでいるみたいだ。
その勢い、圧力にたじろいでしまう。

飛行機に乗っている時にあくびをすると龍が現れる。
あくびをしていない時も飛行機は飛行中ずっとすごい音がしているけれど、あくびをすると耳の中の気圧が変わるのか、龍の咆哮のような声が聞こえるのだった。

大雨が去ったと思ったら雹が降ってきた。
氷の塊が屋根にも壁にもぶつかっては跳ね返りリズムを変えてまた他の屋根に、壁に飛んでゆく。
向かいの建物ではベランダにたらいを持って雹をキャッチしようとするひと、捕まえた雹で雪合戦を始めるひと、みんな楽しそうだ。

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