ドルドーニュの旅を思い出す

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しえさんの #架空の夏休み日記をつける遊びに参加している。
それで去年のドルドーニュの旅のことを少し思い出していた。

サルラ・ラ・カネダの町外れに宿を取ったから、そこに着く前に日が暮れてしまった。
町とホテルをつなぐ真っ暗な森の中を歩いた。
その旅はテントを担いでの旅だったのでもちろん懐中電灯の用意もある。
手元に光があることでかえって森の表面だけが照らされて、その光のすぐ向こうから森の真ん中まではぜんぶ暗闇しかないことがつよく意識された。
何も怖がることはないとわかっている。
けれど闇を踏む一歩いっぽ、次から次へ色んな空想が湧き上がる。
わたしはそれを流れるままにしておいた。
怖いと思ったらこわがればいいし、怖くないことを不思議がることもない。

ふと呼ばれたように感じて手元の電気を消した。
道の端に目をやるとちいさく蛍の幼虫が光っていた。
ずんずん前ばかり見て歩いていたのに、なぜそれに気づいたのかは分からない。
 

去年の来月の今日、何してたか覚えてる?
と一緒に旅をしたひとに訊いてみる。
自転車でドルドーニュ川を下った一週間だよ、と話す。
窓からはいかにも夏らしい雲があちこちを膨らませて、まんべんなく夕陽に照らされているのが見える。
そう言えばフランスに来て4周年なのになにもお祝いしてないねとしょんぼりした顔。
またテント持って自転車旅行しよう、と言う。
疲れた、自転車が重い、とぐにゃぐにゃ言いながら、でも楽しかったんだもん。