高くて遠く

少し寒くなってきて空気が気持ちいい。
空には雲がいくつも層をつくって交差する。
薄くてすぐ壊れそうなのにそのまま動くから、風は空気の動きなんだなと思う。

深呼吸すると空の向こうの匂いをかいでいるみたいになる。
ちょっとずつ自分の手にとれる景色を広げていって、薄い網でとらえる。
もうそれ以上想像できなくなると拡げた手は消えていく。

こういう時いつも佐藤亜紀の『天使』を思い出す。
遠いどこかで休んでいる小鳥に触れて、羽根にくすぐられる。