黙ってしまったカメラのこと

写真展が始まったその日、ずっとそれまで撮っていたカメラが沈黙した。
まるで役目を終えてほっとしたかのように。
ニューヨークにいる時からときどきシャッターボタンが押せなくてまた電源を入れ直しては復活させて…という綱渡りの状態ではあったのだけれど。
私にとってははじめての一眼レフのカメラ。
重たいけれどなるべく持ち歩いて仲良くなってきたところだったのにと思うと切ない。

けれど不思議なことに昨日、友人からお父さまの形見のカメラを譲り受けた。
大切なものを頂いていいのかずっと迷っていたけれどきっとこれもご縁なのだと、たいせつに受け取った。


何かが変わる時だという予感も兆しもあるのだけれど、そんなにいっぺんに去らないで、と思う。
たとえ新しいことのためのどんなものだって、わたしにはしんどい。