ともだちの結婚



大学時代の芝居仲間の結婚式。
あんなにいい光に包まれて、きっとしあわせなんだなあと嬉しくなる。
みんなもしあわせな顔をしていてやっぱり嬉しくなる。

友人がスピーチをしたのだけれどその中に、ぼくたちは一緒に芝居をやって叫んだり泣いたり笑ったりただしていたのに今はこうして家族を持ったり子供を育てたりしている、そんな生きていくことの大切な場面に集まれたことがしあわせです、というような内容のことがあって、ほんとうにそうだなあ、あれからずいぶん時間がたってみんなすっかりなりすぎたくらいに大人になったけれど変わらず集まると話が尽きないし何度同じはなしをしても同じように笑えるし、そこにいないメンバーのことを想ったりちょっと行き過ぎな冗談を言ったりしながらも笑ってまた集まって少し大きくなったそれぞれの子供と遊んだりお互いの元気を確かめあったりする。

いつのまにかお芝居という水もののことをみんながやめてちゃんとした職についたけれどわたしは相変わらず舞台の世界にいる。
わたしだけなにもあのころと変わらず、いまだにちっとも世界に対応していないような気がすることもある。
宇宙船のガラスのそとからみんなを見ている気持ちになることがときどきある。
家族を持つのも最後になってしまったことだし、というのは冗談にしても。
だからときどき、大事な風景みたいに外がわから見守って、急に話しかけられても返事ができないことがある。

でももしかしたらこんなふうなことを追いかけるような生きかたになるのかもなあというようなことも思う。
いつまでも完成しないことを、足りないみたいな気持ちのまま、それで別の場所を向いて紡ぐような。
たいせつな存在がこうしていて、なにかに追いつこうと思ったりいつかの時間を拾い集めたりしながら、その時に持てるものをはかればいい。

ほんとうに年をとるまでずっと同じことで笑っていられますように。
参加するたびに家族とか友達とかが増えて、きっとたいへんだけど。
どこにいてもいつまでも元気でいて。