輪郭



あるときを境に稽古ごとに半歩ずつくらい進めるようになった。
どうしても動けない日があった。
ズバンと打たれる指摘だからこそあたまを通して冷えないうちにからだにのせるほうがいい、とわかってはいたんだけど。
ふがいなさでずっと心臓がどきどきした。
ちいさな糸をひきよせたらそこにぴょんと飛び乗れた。
ちいさいけどたしかな。
そうしたらちょっと深く息ができた。

進んではいるけど本番までの時間やこれからもかかるであろうと想定される距離のことを考えるともどかしい。
ボキャブラリーがそんなに多くないから時間がかかる。
自分を納得させるにも時間がかかる。
時間をかけるしかないから、そこに染まりこむ。

自分らしい動きのことは日常の自分らしさがわからないこととやっぱり似ている。
いろんなところからかけ離れている。
好みや、大切にしてきたはずのこと、身体能力や雰囲気、スピード感や相手がどこの面を見ているか。
ときどき距離も方向もはかりかねて足が止まる。
そしてたいていうんうん、と落ち着いたところは間違っている。
まよってばかり。
怪我してばかり。
まようことは苦じゃないし、怪我だって平気だけど。


+


なくなってしまった蔦のそばからまたくるくると葉がのびてきた。
土はまるきり別の色のものをうむからすごい。