耳をいつも隠している女の子が村上春樹のおはなしに出てくる。
耳を出すとその子はすごいんだけど、踊るときとか初めてヴァイオリンを弾いてみてちゃんと音が出たときとか自分のペースで話ができる友人といるときとか、そういうときわたしは耳を出す。
といってもほんとうに耳を出すわけじゃなくて、もっと別のある感覚を膨張させるような感じなんだけど、そうするとちょっと無敵なかんじになる。
いままでそのことと写真を結びつけたことがなかった。
なんとなく写真を撮るときには別のチャンネルに慣れていて、苦しくなるようなのめり込む目で見たりしていなかった。
まだ、自分と関係のないそとがわのものとして見ている。
手を伸ばして、ひっこめて、あの日向の赤ちゃんとお母さんみたいに。
たぶんそこにあるのは瞬間しゅんかん過去なのだろう。
だからほんの少し、隙間がある。
カメラの鏡のまえに、自分が用意したある場所に映して。
イメージも、鏡も、隙間も、なにか考える間もなにもかもとりはらいたい。
えぐるみたいに。