手紙、『ホフェッシュ・シェクター/ポリティカル・マザー』、懐かしい顔、爆音、待っていたもこもこ



手紙が届いた。
金色の鳥ととりかごが入っていた。
線いっぽんがそのひとをあらわすことに見惚れる。

大切な日にあてた手紙を書いた。
きっとこういうものはいっぱい推敲するとよくわからないものになってしまうから、勢いで書いていきおいで出した。

自分のペースで話ができる相手とそうでない相手との差が激しすぎる。
日によって開いたり閉じたりが激しすぎる。
両極のあいだでつりあいをとっているうちにタイムアウトしてしまう。

ホフェッシュ・シェクターを見に行った。
会場についてパンフレットを見たら、オランダでGaliliにお世話になったときにカンパニーにいたシータが出演していた。
数日前、そのGaliliでみたプレミエの時の記念ハンカチを見つけた。
メンバーの顔写真がプリントしてあるという(おそらく)冗談ぽくつくってあるハンカチ。
私がもらったのはシータのもので、なんとなくそれを広げ、畳んだ。
そんなことをした数日後にこうして一方的にではあるけれど再会。
オランダにいるときにもいいダンサーだなと思っていたけれど、こんなに野性的な流れを持っていたっけ、と目が離せなかった。
もう少し華奢で、美しい渋い金髪とドレス姿を覚えている。
舞台の上の彼女はまる坊主で、美しい大きな筋肉の、ドイツの若い兵のようだった。
空気の質量を自由にあやつる。
誰よりもなんでもないことのように踊っていた。
誰より、決まりなんてないみたいに。
衝動もエネルギーも知らない何かに抜けてゆくような動きも、ごく自然で隙がなかった。

舞台の爆音の影響でしばらく耳が半分しか聞えなかった。
いつまでも残る音の記憶に脳みそが押されて、生あくびばかりしていた。
からだじゅうであんなエネルギーを受け止めて、どうしてみんな席に座っていられるのだろう。
わたしはぐっとてのひらに爪を立てて、目を見開いて席におしりを縫い付けている。
びりびりあんまり波が激しいからそのうちヒビがはいって粉や液体になってはじけちゃうかと思った。

ずっとひとりで待っていたちゅんが眠れずに起きていて、お風呂を待つ私の手の上でまるくなる。
足の裏があつくなって目のふちが真っ赤になる。
近くに来るくせにわたしが背中やあたまを撫でようとするとヤダヤダヤダ、とちょっとずつ逃げる。
そばにいたいんだね。
別に撫でたり、言葉を通じさせるひつようはないんだ。
勝手に話しかけたり、ちゃんと目にみえる同じ空間にじっとおちついていたり、手の届くところに身を寄せたり、そんなことだけでじゅうぶんなんだね。