* やさしい風景はいつも



たいせつなひとや、たいせつなひとや、たいせつなものを
どうやってたいせつにしてゆけばいいのか途方にくれることがある
夕暮れを握って離さないでいることはできないように、それはあまりにも大きすぎて
そのおおきさからも、自分の気持ちの切なさからも、わたしはふと目をそらしてしまう

まっすぐに一番澄んだところにまで根をおろしていたいと望むけれど、わたしの目の前にはややこしく絡んだ枝がある
自分の手で目をふさぎ、ひきとめて、どこにもゆかせないようにしているのかもしれない

たいせつなもののことを考えようとすると、めぐりめぐってそれは自分のことをどんなにか大事にしようとしていることにつながっているかに気づいてしまう。
そのことをばっさりと切り捨てることができない呪いは、いつかけたんだろう。
そのことがかなしい、だけれどそれすら自分のためにすぎないこのエゴから、ほかのひとはどうやってとらわれずにいられるのだろう

むこうみずなくらいのまっすぐさに惹かれるのは、だからなんだろう
そしてそのまっすぐさにいつも苦しめられる
単純さにひかれる
けれどいつもそれに飽きる自分に傷つく
憎むものと愛するものがいつも同時に存在していて、それはわたし自身がその矛盾でできあがっているからなのだろうという気がした