* 生まれ出づるとき



茶色の蔦が倉庫のような建物に絡んでいる。
出勤途中いつも横目で眺める光景。
かさかさに乾いてもう枯れているんだろうなと思ったら、ある日柔らかく透き通ったつるつるの葉がいっぱい芽吹いていた。
粒ぞろいで太陽を浴びて珠のように光っている。
もう、死んで長年経っていると思っていたのに。

きっと今頃この蔦も、赤ちゃんみたいなみどりでいっぱいなんだ。


草や花の時間は全然一定じゃない。
ずっと眠っていて、あるときにものすごい駆け足でいのちを吹き出し、また収束する。
さくらのあとに咲いたつつじはあんなに重たそうに埋め尽くしていたのに、もう徐々に萎れてくさむらの中に落ちている。

今年気にした花。
梅、桃、アネモネ、コブシ、木蓮、くちなし、チューリップ、ラナンキュラス、さくら、さつき、ひなげし、芝桜、クレマチス、みやこわすれ。