* しまうま



ずうっと前に上野動物園に行ったとき、後ろ足をちょっと曲げてもちあげたままじっと動かないしまうまがいたなあ。
長いまつげを伏せて目がうるんでいるように見えた。
寂しいのか、ひとに見られている現実から逃げようとしているのか、それとも全然そんなんじゃなくておなかがいっぱいで動けなかっただけかもしれないけれど。
しまが見事で、筋肉標本のようにいい大臀筋に見えたのに鼻先は頼りなげで、だから目の前の柵がことさら頑丈に見えた。

ここのしまうまは元気そうだった。
ほんとうのところは分からないけれど。
友達とくびすじをぐりぐりすりつけたり、芝生をごりごり食べたりしていた。
おひさまをいっぱいに浴びて、白い部分のしまは土埃で茶色になっている。
柵がなくて目の前に突然このこたちがあらわれたときにはびっくりした。

ちいさな動物園だけれど、好きになった。