住みなれた場所



引っ越しを何度しただろう。
家のなかがどんどん包まれていって徐々に生活が限られてゆく。
今まで光が当らなかった場所がのびのびとほこりをたてて、ひんやりとした床に立ってみる。
働くお兄さんに麦茶をあげる。
ひっそりひとりになれる場所に座って働く声を聞く。
ときどき友達と離れることを思った。


いつでも過ぎ去ったことにこころを残すたちではないと思っていた。
周りがしんと静かになってやっと、そこに残されたあれこれがおきのように灯って、そういう小さな寂しさのような諦めのようなものは、いつまでも消えないのだと知った。