さるすべり



去年のちょうど今頃、さるすべりの樹の下でちょっと時間をつぶしていた。
どうにもそこに足が向かわず、あとまわしにしたってなんの解決にもならないと分かっているのにその場所でぐずぐずした。
かといってそんなに大胆にもなれずほんの少し遅刻することでしか抵抗できない自分の性格も分かっている。
うなだれていたらぽつんと靴にぶつかってきたものがあった。
見ると、鮮やかな桃色の花が靴に乗っかっていた。
あたりは薄暗くて雨上がりの湿った空気なのにその色だけが涼やかにそこにあって。

花をノートにはさみ立ち上がるとからだが軽かったのを覚えてる。