帰り道

家の近くの樹がたくさん生えている場所があってその一角に、とてもいい香りのする場所がある。
たぶん何かの花だと思うんだけど。
樹の香りが一瞬それに変わって、またすぐ樹の香りにうつる。
夜にしか気付かない香りなのでいったい何がその元なのか見ることができないんだけど、それでいいと思っていて、帰り道はいつもふらふらとそこに近寄る。
高いところから何かの虫が澄んだ声で鳴いている。

雲がちな空だけど星がいくつか見える。
目がよくないから星を真っすぐ見つけることはできないけど、目線をやらない空には確かに星があって、だからあえてそのまま星を見ない。