福岡公演へ

まだ暗い朝なのに散歩の犬がぴょこぴょこうれしそうな足どりで歩いていた。
急に暖かくなっていっぽん先の道の家がもう白く霞んでいる。
おひさまが出る前に出発するなんて久しぶりだな。
まだ半月がくっきり。

この道を走ってももう探さなくてもいいんだ。
はだかになった樹のむこうに見える朝の空はきれいだな。

福岡には小学校の終わりから中学に入った3ヵ月だけ住んでいた。
あんまり短かったからその後に何度も見た夢の方が鮮明で記憶にあるいくつかがほんとうのことか分からないでいるくらい。
友達と星の観測をするって言って夜中に遊んだ倉庫の屋上とか、かもめにパンの耳をあげていた川にはりだした柵とか、雷が落ちた登校の道とか、汽笛を聞きながらくぐった門とか、まだあるのかな。

角をまがったら長い道のつきあたりに大きく朝の太陽が見えた。
おひさまはどんな小さな虫も路地の窓もひとしく、おしみなく照らす。


福岡で踊ってきます。