パリのカフェ、嵐のあとのくちなし、15年ぶりの、欠ける月

みおを撮った。
カメラの前にどう居るかというのはひとによってこんなに違うものなのだな。
それとも予想していたものとちょっと違ったからだろうか。
ああ、そうか、と。
もちろんたまたまそんな風に思っただけだけれど、知ってたけど再確認、のような表情があって。
あたまのなかに残っている表情が、出来上がった写真のなかにあればいいんだけど。
横顔をもう少し撮っておけばよかった。
ほんとうに撮りたい瞬間はなかなかカメラを構えられない。

待ち合わせに早くついたのでデパートの香水売り場に寄った。
香りを試していると店員さんがアドバイスをしてくれた。
ある花の香りは2週類あって、ひとつはよく知っているものでもうひとつはすっきりと瑞々しかった。
店員さんがそれを「嵐が過ぎ去ったあとのような」と表現していて、それがとても素敵だと思った。

ニューヨークにいるあいだに昔のこいびとからメールが来た。
もう15年も会っていないのにふと連絡をくれた。
この何年か、顔をあわせてもおかしくないほど近い職場にいたらしい。
お互いの生活を報告して、しあわせそうなことにほっとする。
子供の頃よく引越しをして、その頃にはもう別れた友達とは会えないんだと思っていた。でも大人になったら案外すぐその町に遊びにいけるんだなということに気付いて。
そんなことを思った。


雲が厚くて欠ける月を見ることができなかった。
でもこれから毎晩少しずつ切り落とされてゆく月といっしょに、自分のなかの余計を落としてゆこう。