リハーサル、臆病な犬と蜘蛛の巣の森、秋のこと



作品に参加する中で自分がなにを持ち込めるかを少し落ち着いて感じることができるようになってきたかもしれない。
どんな種類のことは教わらなくてはいけないか、どんなことなら肩のちからを抜いてできるか…そんなことの自然な選別。

雷の音で目覚めた。
雨で空気が冷たかった。
シーツの色みたいな光だった。
喉が乾いていたから水を飲みに行ったらちゅんが私を追い越して何か食べたいとせがむ。
ぶどうの皮を剥く指にふたりとも視線をよせて集中して、仲良く半分こにして食べた。
気がすんだらまた自分の好きな場所に飛んでいってしまった。

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とても臆病な犬の夢を見た。
ベランダにつないでいるのに、ちょっとでも見ると柵の向こうにからだをじりじりねじ込んで、首輪だけでぶらさがってしまう。
可愛いから見たいのに、見たら可哀想というジレンマ。
それから、手塚治虫万博みたいなことをやる会場のプレみたいなものに連れていってもらった。
金属なのにどういう仕掛けかわからない動きをする部分があって、そこを触らせてもらった感触を覚えている。
人間よりはるかに大きなブリキのおもちゃがいっぱい並んでいた。
森の奥に連れていってもらう。
蜘蛛の巣がいっぱい張っていていちいち蜘蛛にごめんねを言いながら、傷つけないように歩いた。
前を歩くひとはまるでひっかかっていなくて観察しているうちに巣はある間隔をおいてふたつの樹の並びをつないでいるだけだということに気付く。
杉のような樹が赤い土からのびていてやわらかい、でも眩しく光が差し込んでいた。
きらきら蜘蛛の巣が光って、カメラがあったらなあと思う。

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秋が好き。
しんとして、でもあたたかく、落ち着いた準備がいちばん底で進んでいる。
なにもかもがまっすぐそこに届く。
静かに見つめて、丁寧に摘みとる。