* ちゅんを捜す夢



たてつづけにちゅんを見失う夢。

狭い路地をくぐり抜けてがたぴしする戸を滑らすと、ねじまき鳥のいそうな小さな隠された中庭に出て、その脇を線路が走っている。
わたしはなにか急いでその電車に乗らなきゃいけない用事があったようだ。
電車はドレミファ…の電車みたいに赤くて少しまるみがあって、古ぼけていた。
それに子供用みたいに入り口も小さくて天井も低かった。
頭をかがめて電車に乗ったとたん、この電車じゃないことを思い出してぱっと飛び降りる。
そしてまた路地を戻った。
坂の向こうが少し橙色だったからもう夕方だったんだと思う。
町中に鳥がいる。
ほとんどはヒヨドリなのだけれど、ときどき鮮やかな別の鳥もまざっている。
そういえばちゅんはどこいったんだろう、と見回して呼んでみるけど、どれもちゅんじゃない。
人懐っこいやつが時々肩にとまるけどちゅんじゃない。
考えたら、さっき電車に乗るときに私についてきてしまって、私が電車を降りたことに気付かなくてそのまま電車を追いかけてしまったに違いない。
電車は一日にそんなに走っていなかったから、線路ぎわをちゅんを呼びながら走った。
線路は山とか村みたいなところを通っているんだけど、電車に合わせて全部ミニチュアみたいだった。
ちゅんはいくらさがしてもいなかった。
こんなふうに別れなきゃいけないなんて思ってもみなかった、と泣きたくなるけど、泣いたらもう諦めたと思ってほんとうにかえしてもらえなくなる、とこらえる。
町にはたくさん鳥がいるけどどの鳥もかわりにはならないと思った。

そんな夢。

こないだ花鳥園で鳥にかこまれたからこんな夢をみるんだと思う。