* おどりおわって



踊っていて、ぼろぼろとこぼれてゆく気がすることがある。
そこにいるのは毎秒しらない自分なので、いちばん新しい皮膚は空気に触れると剥がれ落ちるのだろう。
空気なのか、時間なのか自分呼吸のようなものなのか。
それともひかりと関係があるのか、わからない。
嗚咽のように、砂のように。
そこに尽くし、惜しみながら切り刻み、繋ぐ。
なにを、なにに向かって差し出しているのか、
なにを、なにから汲み取ってわたしは消えないでいるのか、わからない。

それはたまらなく心もとない瞬間であり、たまらなくあつく、あたたかい瞬間。
からだがもうそこにとけちゃえばいいのに、と思う。
でもほんとうはそれに抵抗して、しっかりと輪郭を保ちひかりを浴びている。

即興はもしかしたら掘り出すことに似ている。
あたらしいかたち、あたらしいものがたりを見つけては手放し、より深くに潜ってゆく。
うちがわに、世界にむかって。
さぐるのはそこに予感があるからだ。