* 体温



アラスカの本を読んでいる。
生きものとして忘れかけていることがたくさんある、と思う。
一緒になってこころを動かされる。でもその景色はどんなに想像をふくらませても、およばない。
今すぐ飛んでいきたくなる。
毎日その見る対象のことを知る、そのことだけに時間を費やせるところに。

ある土地の薬草の専門家のおばあちゃんの話を読んだ。
子供の頃から薬草のことだけを考えておばあちゃんになるとはどんな人生なんだろう。
わたしにはそんな風に費やし、寄り添って、知ったものがひとつもない。
自分の時間をあげたものはちゃんと顔を見せてくれる。そんな身ひとつでできることが、もしかしたら一番むつかしい。

ちゅんのことならちょっと分かるかな、と思って羽根づくろいをしている背中を見ていて、なんていっぽんいっぽんがつやつやしているんだろうと見惚れる。
鳥の尾羽の付け根には油が出る腺のようなものがあってその油を羽根にいきわたらせるそうなんだけど(この間買ったインコの本に書いてあった)、ちゅんは誰にも教わらないのにそのことが出来るようになった。
飛ぶことだって私は教えてあげられなかったのに。
うん、決して、支配するように知りたいわけじゃない。
通わせたいだけなんだ。