* 時化



いちにち気持ちが彷徨ったままだった。
ひっそりと染みついた淋しさが浮き出てきてからだに膜をはっているようだった。

見たいものにも逢いたいものにも、どんな言い訳もせずにまっすぐあいに行かなきゃいけない。
でもそう決意したとたんに、そんなふうに何ものにも絡めとられずに向かいたいという強い気持ちがあるだろうかと考える。
願うだけではいけない。
まっとうに手を伸ばしていてはじめて、そこへ向かえるのだもの。
それほどわたしはきちんとなにかとぶつかっている?
なにかを芯から求めている?

今この時間に生きていて多くのことにこころを動かされている。
踊りの舞台、友達のことばやいつかの笑顔、一緒に見た景色とか、読んだ本、…。
そのたくさんのことをちょっぴりずつ舐めてわたしにできることはなんだろう。
この世界になにかをかえさなきゃいけない。
受けとったよろこびとかかなしみとか光も傷も、ちゃんとつなげていかなきゃいけない。
そういうことをようやっと、少しほんとうに感じることができた。

わたしが踊ったり話したり撮ったりすることなんてとてもちっぽけで、もしかしたら満たせるのは自分自身だけかもしれない。
でもそれすら十分じゃないのだからせめて、満たす方法をさぐらなきゃ。
あしもとをじわじわ掘ってなにかを待とうって思っていたけれどそんな悠長なこと言ってられない。
突貫工事だ。
だって、わたしの好きなひとたちはあんなにもたくさんひきうけているんだもの。

うごかなきゃ。