おさんぽの長い影



またお父さんとお母さんと近所を散歩した。
お父さんもお母さんも、いつのまにか年をとった。

ドイツから日本に戻ったとき、迎えに来てくれたお父さんがすごく年をとったことにびっくりした。
たった3ヶ月しか家をあけていなかったのに、すごく白っぽく縮んでしまったように感じた。
この年になってもいつまでも子供じみていて恥ずかしいけれど、そんな様子を見るといつも心臓がぎゅうっとなる。

中学生くらいの時にはとっくみあいの喧嘩をした父だが(世の中の女の子はあんまりとっくみ合わない気もするけれど)、今はもう私のほうが力が強い。
…って、これもおかしな話?私が力がありすぎるのだとは思うけれど。
もともとからだの弱い母はずっとこのところ体調を崩している。
母が倒れると、やっぱり子供みたいに不安にうろうろしてしまう。


自分の好きなことばかりしてきた私は、年相応に順を追って重ねていくべきもののあれこれが欠けている。
そんな私を諦めて、そばにおいてくれている両親をとてもありがたく思う。
私が両親にあげられる幸せは多分、その欠けているぶんだけ普通のものじゃない。
たぶん。
そして、やっぱり最後まで自分勝手で自分が可愛い私は、自分が好きなことしかできないんだろうなと思う。
そこにひっぱっていって、どきどきとかわくわくをあげるしかできないんだろう。

だからそれについてこられるくらい、元気でいてよね。