* 雑風景



友達に手紙を書いた。
こうしてひとりごとを書くのはだいぶ慣れてきたのに手紙はへたくそだ。

久しぶりに夜中ベランダに出た。
どうしてずっとこれをしなかったんだろうと考える。
月は靄にいだかれぼんやりして、何故か砂場のにおいがした。
こうしてベランダに出ていると時々ぎゅうっと目の焦点が合って、街の灯りのにじみが絞られてゆく。
このまま目がよくなるんじゃないかといつも思う。
どうしてこのときだけ、目の筋肉を操作できるんだろう。

月はおとといから欠けていっている。
私の中のいらないものもからだから抜けてゆけばいい、と思った。

カザルスの本を読んでいる。
“みんながわかる言葉で話しなさい。”
はっとさせられた。
胸がいっぱいになってなかなか読み進まない。
寝ながらカザルスのチェロを聴く。