ダム、一本道



ダムが好き。
これもやっぱり、溜まって動かない水、だ。

ダムを一緒に覗き込んでいる友達がいる。
彼女の描くビジョンは圧倒的で、懐かしいような決して手の届かない憧れのようなものに彩られている。
彼女の見た景色なのに、そこに私の記憶の中の断片的なイメージが吸い寄せられ、真ん中に像を結んでしまった。
ときどきそこを覗き込む。


タルコフスキーの描く溜まった水のように、それはすこしぬるんでいて鈍い光をそのままはね返している。
そして、樹の枝の骨。

そこが永遠みたいに、並んでことばも交わさずに。


目を閉じると一本の道が見えてくる。
道の両脇はそのひかりと影の調子によって決まる。
草むらだったり古い家が囲んでいたりする。
目を凝らしながら進むとそのうち私の意思とは関係なく時間が進み、知らなかった坂や知らなかった景色を見せるようになる。
ときどき、とても高いところに出る。
そして道は、向こうの広い水に通じている。