『海のふた』 よしもとばなな

よしもとばなななんていつ以来かな。高校生の時か。大学生のときか。胸をきりきりさせながら読んで、彼女の影響でスティーブン・キングも好きになったのにいつのまにかすっかりそこから抜け出てしまった。あまりにも甘く、直截的でセンチメンタルにすぎる。…

『ナイン・ストーリーズ』 サリンジャー

読んでいても他のことばかり考えちゃう本がある。なかなか集中できない本というのとはまた違って、どんどんどこかが鋭敏になってきてそちらに気をとられるような。立ち表れた感覚の方に意識が飛んでしまって、一度止まったり思いをめぐらしたくなるような。…

『イギリス人の患者』 マイケル・オンダーチェ 

はじめて読んだのは何年前だろう?詩みたいだ、と思った。どういうものを詩と呼ぶのかいまもってわからないけれど、そう思った。色や匂いや温度、それからそういう抽象的なものじゃなくて、湿った草や土の味、透明な闇を縫う光、ひとの香り。そういう具体的…

『遠い朝の本たち』 須賀敦子

たいせつなエッセンスがつまっていた。星野道夫さんの本で知って読みたいと思っていたアン・モロウ・リンドバーグのことが再び出てきたし、テグジュペリの飛行機から見るひとのいとなみの話も。ある断片がこころに残っているときに、そこにすっと繋がるなに…

マイケル・オンダーチェのこと

マイケル・オンダーチェの本を読むと思うのは、どうしても忘れられないひとや記憶とは切り離せない自分をいつも影みたいにかたわらに置きながら、それでもまったく別の時間の中を歩かなければいけないということで、それは懐かしいみたいにかなしいけれどだ…