昼過ぎの電車



ふと急にここにいることが心許なく感じる瞬間がある。
ただ誰もいない電車のあたためられた座席に座る時。
ベランダにふいにひんやりと風が入ってきた時。
それは満たされていることとも、何か悲しい気持ちでいることとも関係がない。
隙間にぽとんと落ちてしまったような、理由のないざわめき。

座席によじ登った子どもが、ふいに射した夕日をまぶしがって目を背ける。
影から出るたびにそれをやるから可笑しくなる。

秋も子どもも、たっぷりと満ちているからいいのかもしれない。